ビジネス・投資ガイド

←前のページへ | 3/3 | 次のページへ→水力発電(3)

■ 環境保護と人々の豊かなくらしの調和した持続的開発へ
水力発電による電源開発を進めていく上で、絶対に忘れてはいけないことがあります。ダム建設による地域の環境や人々の生活への影響という問題です。
上述したナムトゥン2プロジェクトにおいても、国際NGOや環境保護団体から様々な批判が起こっているのが実情です。プロジェクト実施における主要な問題点としては、以下の論点が指摘されています。

危機に瀕する希少動物たち
  危機に瀕する希少動物たち
昔ながらの暮らしを営む農村にも、容赦なく変化が訪れる
  昔ながらの暮らしを営む農村にも、容赦なく変化が訪れる
○自然環境への影響
「東洋のガラパゴス」と呼ばれたナカイ高原の450 平方キロメートルが水没することによって絶滅が危惧されている希少な動植物の生息地が破壊される可能性がある。また、川の水位の変化によって魚の生息地が破壊され、回遊パターンが妨害されるため、多くの在来種の絶滅が危惧されている。

○社会環境・生計手段への影響
ダム建設予定地であるナカイ高原に住んでいた約6200 人の人々が移転を強いられる。住民移転計画のパイロット村では、焼畑農業と水田耕作を行っていた人々が商品作物の栽培や漁業など慣れない生業を営まなければならず、移転後の生活再建が適切に行われていない。移転後3年が経過してからは、商品作物栽培のための技術支援が受けられなくなり、肥料の支給が減らされた。これによって商品作物栽培による住民の収入が減っている。また、セバンファイ川とその支流で生活を営む12~13 万人の人々が転流による増水によって、漁業被害、乾季に耕作する河岸の畑の通年水没などの影響を受ける。

ナムトゥン2プロジェクト以外にも、過去10 年間にラオスではナムソン導水プロジェクト、トゥンヒンブンダム、ナムルックダム、ホアイホーダムといったダムが建設されてきましたが、これらのダムにおいても様々な環境問題が起こっており、いまだに解決に至っていないそうです。

このようにダム建設は自然環境と人々の生活との両面で様々な問題を引き起こしているのです。ただ、果たしてダム建設そして水力発電そのものが悪なのでしょうか?

確かに、これまでのプロジェクトが様々な問題を孕んでいたことは事実でしょう。そういった問題を指摘しダム建設に反対するNGOや各種市民組織の主張も一面では正しいと言えます。しかし、だからと言って水力発電を止めることは現実的に困難です。ダムが自然環境や地元の住民の生活を破壊しているのが事実であっても、ダムによって生産・輸出された電力によってラオス・タイを中心としたインドシナ広域の人々の生活・経済活動が支えられているのもまた事実です。地球温暖化が世界規模で注目される昨今、安全でクリーンな水力発電の意義はむしろ高まっているとも言えます。

私たちに求められるのは、経済的利益だけを考えて闇雲にダムを作ることでも、非生産的に反対運動ばかりを繰り返すことでもないはずです。きちんとした事前の環境・社会影響評価を行い、想定しうるリスクに対する対策を講じること。立ち退きが必要な住民が移住後も長期的に生活を保障されるようなシステムを構築すること。単独の企業や国家の利権ではなく、地域の人々、コミュニティのニーズを広く分析し、本当に必要なプロジェクトの目的・内容・規模を精査すること。そういった真摯な努力を国際的に協力して行い、ラオスの美しい環境の保護と人々の豊かなくらしとが調和した持続可能な開発を志向していくことが、いま求められていると言えるのではないでしょうか。

123
←前のページへ | 3/3 | 次のページへ→

引用元:
鈴木基義著『ラオス投資ガイド』日本アセアンセンター発行。2007年。p. 21.

本サイトの文章および写真を許可なく複製することを禁じます。

Laos Japan Research and Consulting Co., Ltd.
Ban Thatkao, Unit05, Thadea Road Sisathanak District, Vientiane, LaoPDR

© Laos Japan Research and Consulting Co., Ltd. All Rights Reserved.